マラ州セレンゲティ地区13の小学校へ
教科書10,000冊配布プロジェクト
プロジェクトの概要
タンザニアの農村部では教科書を1冊も持たずに勉強している学校が沢山あります。当然ながら教育の質は高まりません。地域の大人たちも教育への意識は高くありません。そのような環境の影響で様々な問題が発生しています。
【主な問題】
■勉強したいのに出来ない!

マラ州の小学校は生徒100人~150人に対して先生と教室が1つずつ。教科書は全くない状態で勉強していました。そのためSecondary Schoolへの進学率は国平均と比較しても圧倒的に低い数字
■学校に行きたくても行けない!

保護者の教育への関心が低いことに加え、タンザニアではまだまだ結婚年齢が低く、下手に知識が身につくと嫁ぎ先がなくなるという理由から学校に行かせてもらえない女の子もいる
■密猟に手を貸し、命の危険も

満足に教育を受けることが出来ないことから、経済的自立がままならず、生活費を手軽に手に入れるために密猟に手を貸し、時には命の危機にさらされる子供たちもまだまだいる
※サイは密猟等により絶滅危惧種となっている
■自然・野生動物の大切さに気付かない

外部との交流機会がないことから、自然や野性動物の大切さについて認識が乏しく、密猟、ゴミのポイ捨て、家を建てるための木の伐採など自然環境の破壊につながる行動が散見される
そういった数々の課題を解決するための土台として、まずは教育環境を整えることから始めよう!とこのプロジェクトを立ち上げました。
有志での活動から含めると2017年から開始し、現時点で9校への支援が完了しており、残り約2,500冊になっています。
地域格差を生まないため、また、この地域全体で自然や野性動物の保護に取り組んでいく意識を醸成していくためにも早期に残り2,300冊の配布を完了させてたいとプロジェクトを進めています。
これまでの歩み
~プロジェクトの始まり~
それは、2017年、現在のNGO TOFA理事長 田中とその友人7名でタンザニアを訪問したことがきっかけでした。
最初に訪問した小学校は、マラ州セレンゲティ地区にあるニャンブリ小学校。2017年時点で生徒は1,000人以上いましたが、先生は10人、教室は8教室、教科書は0冊という状況でした。また、教室の床も破損していて、とても安全に学べる環境ではありませんでした。
そんな環境下でも、子供たちはとびっきりの笑顔を私たちに見せてくれました。
タンザニアを訪問し、タンザニアの大自然や子供たちの笑顔から私たちは沢山のものをもらいました。そんな経験から、私たちもタンザニアの子供たちに何かできないか、を考え、まずは有志で寄付を募りながら教科書の配布や教室の床の修繕を始めました。
【2017年の様子】
■1,000人以上の生徒

生徒は1,000以上。私たちは初めて見る外国人だったため、近づくと逃げてしまったり、泣き出したりする子もいた。
■破損の多い教室

教室の床はボコボコ。机と椅子もだいぶ傷んでいる。この長机に6人程が詰めて座って勉強をしていた。
【支援後の様子】
■教科書を手にする子供たち

生徒にとっては初めて見る教科書。教科書が手元にきたことで、みんな頑張って勉強するようになった。
■綺麗に整備された教室

床は私たちの支援で修繕。机と椅子は保護者の手作り
~プロジェクトの拡大とNPO法人立ち上げ~
2017年~2019年にかけて、有志でニャンブリ小学校の支援を続けたことで子供たちの成績向上や保護者・地域の大人たちの教育への関心の高まりなど、目に見えて変化が生まれてきました(成果の詳細は「これまでの成果」をご確認ください)。
しかし、ニャンブリ小学校が変化するだけでは上記に記載したような問題を根本的に解決していくことは難しい。また、地域で格差が出てしまうと争いのもとになってしまう、ということを考え、ニャンブリ小学校周辺の小学校にも支援を拡大することを決め、2020年にNGO TOFAを立ち上げました。

支援先の13校。教科書は算数、英語、国語、地理、歴史、科学、公民、読み、書きの9種類あり、1冊に複数学年分が収録されている。タンザニアでは教科書は学校で管理し、授業の際に持ち出す形のため、1人1冊持っている訳ではない。
※上記人数は2020年12月時点のものであり、年々生徒数は増加している
~教科書支援状況~
コロナ禍に団体を立ち上げた影響もあり、立ち上げ当初はなかなかプロジェクトが前に進まない時期もありましたが、様々な方々の支援を受けながら、現在、13校中9校の支援が完了し、残り4校、2,500冊となっています。
【2024年末時点での教科書支援状況】

支援中の学校は残り4校
・Bonchugu
・Kichongo
・Machochwe
・Nyamakendo
教科書数としては約2,500冊となります。
教育支援実績
教育環境整備としては、教育支援以外にも様々な活動を行ってきました。
1.教育用品支援
(1)教科書支援

毎年、直接小学校まで教科書を届けに行き、子供たちに手渡しを行っている(子供たちで取り合いになることもよくある)
(2)アトラス(世界地図)支援

アトラスは地理の先生ですらほどんと手にしたことがない。こちらの写真でアトラスを受け取っているのは地理の先生。生徒よりも大喜びしていた。
(3)ノート・ペン支援

列を作って、先生からペンを受け取る子供たち。ペンやノートなどの消耗品は常に不足している
(4)クレパス・画用紙支援

子供たちはクレパスを使うのも初めて。24年に実施したお絵描き交流では、子供たちはクレパスを使って「自分の夢」を描いた
(5)サッカーボール支援

多くの学校では、このように布を丸めてボール代わりにしている。

サッカーボールは子供にも大人にも大人気。持って行くと、すぐにグラウンドでサッカー大会が始まる。
2.教室整備
(1)床の修繕

これまでにNyamburi小学校8教室、Masebe小学校2教室の修繕を行った
(2)豪雨で壊れた教室の修繕

2021年に豪雨によりNyamburi小学校の屋根が破損。その修繕を支援
(3)幼稚園の屋根設置

屋根を付ける費用が不足し、途中で建設が止まっている幼稚園。壁の内側には雑草が生えてしまっている。

屋根の設置が完了!通うのを心待ちにしている子供たちが集まってくれた
これまでの成果
1.子供たちの学業成績の大幅向上
(1)セカンダリースクール合格者大幅増
教科書が手元に来たことで子供たちは一所懸命に勉強に取り組むようになり、セカンダリースクールへの合格者が大幅に増えている
<Nyamburi小学校>2017年:3名→2023年:60名
<Machochwe小学校>2023年:55名→2024年:71名
※Machochweは2023年に初めて150冊を届けたが、その僅かな教科書でも勉強への意欲が大幅に高まり、セカンダリースクール合格者が大幅に増えた
(2)Nyamburi小学校は2年連続国内で学業成績トップをおさめ、国から表彰される

国から表彰された際に校舎も寄贈された

待望の女子トイレも出来た!
2.自然や野生動物保護の意識の向上
(1)支援先小学校の卒業生が自然保護活動に従事

(2)セレンゲティ国立公園からも活動が認められた

私たちの教育支援活動が野生動物の保護につながっていることがセレンゲティ国立公園に認められ、国立公園からNyamburi小学校に校舎が寄贈された
セレンゲティ国立公園内のテントロッジで偶然出会ったMasebe小学校の卒業生。私たちの話をきっかけに自然保護・野生保護の重要性に気づき、現在保護活動に携わっていると話してくれた。(左から2人目と4人目)
3.州政府や地域の大人、保護者たちの教育に対する意識の変化
(1)州政府から一部小学校に教科書が支援される
私たちの活動が州政府の耳に入り、活動地域の一部の小学校に対し、州政府から教科書が支援されてい た
(2)保護者や地域の大人の教育への関心の高まり
活動開始当初は教育に無関心だった保護者や地域の方々が現在では積極的に子供たちの教育環境整備に携わってくれるようになっている

私たちが訪問する際には、州政府の方や周辺の教育関係者、保護者の方々も集まってきて対話を行う

机や椅子、先生の居室を作るために集まってきている保護者の方々